たとえば、「百年シリーズ」では、「ウォーカロン」という言葉を考え出すのに半年以上かかった。友人たちに相談をしたし、外国人の意見も数名きいた。「スカイ・クロラ」では、「散香」という戦闘機の名前を決めるのに、やはり半年近くかかった。誰かが考えてくれるなら、採用時に100万円出しても安いと思っているが、これまで他人の案を採用したことは一度もなく、やはり参考やヒントにしかならない。
 名称を決めることはそれくらい重要だ。ものの名前というのはほとんど命だ、と僕は感じている。名前の悪いものは、絶対に良いものにはならないのだ。たとえ、一時的に良くても、歴史に残らない。最後に残るのは名前だけである、といっても良いだろう。

同じく『スカイ・クロラ』の「キルドレ」という単語も傑作だと思う。ふと思い出したが、『ぼくの地球を守って』という日渡早紀さんの作品に出てきた「キサナド」という単語も。その一言を眼にする/耳にするだけで物語が頭の中にぱあっと広がるような、そんな音の連なり。